実務翻訳について その2

和訳 or 英訳

 友人が、翻訳学校の実務翻訳のコースに通っているとき、先生に「英訳ができるようがんばりなさい」と薦められた、と言っていました。

  英訳ができる翻訳家は、和訳ができる翻訳家に比べて数がずっと少ないので、大きなアドバンテージになるとのことでした。競争相手が少ない分、仕事がとれる確率が高まるというわけです。また報酬としても、英訳のほうが割がよい、と一般に言われているようです。

 英訳ができると、仕事をとる際にアドバンテージになるのは事実でしょう。 しかし報酬に関しては、英訳は割高だという話が一般的な一方で、 英訳200ワード(1枚分)=和訳800字(2枚分)=熟練した翻訳家の1時間分の仕事量※1(ページ下部参照)という基準があり、翻訳会社のほうで和訳と英訳で報酬に差が出ないよう考慮してあるという話も聞いたことがあります。

枚数がこなせるのであれば、和訳も英訳も差はない

  確かに、わたしの翻訳会社との契約でも、英訳1枚分が、だいたい和訳2枚分の報酬にあたります。上記の計算どおりに枚数がこなせるのであれば、和訳でも英訳と差がないということになります。

 翻訳家は、和訳を専門にする人と、主に英訳を専門にする人と、和訳と英訳の両方をする翻訳家がいます。翻訳会社は、それぞれの専門を見て、仕事を振り分けています。

  わたしは、翻訳の基礎を習った会社で英訳ばかりしていたこともあって、英訳が好きな一方、和訳が大の苦手です。そのため、基本的に英訳を専門としています。

  わたしにとって英訳はパズルのようで、訳していてとても楽しいのですが、和訳はどうも苦痛です。同じ翻訳であっても、わたしにとってはまったくの別物に感じられます。おそらく仕上がりもぱっとしないのでしょう、翻訳会社からも、和訳の依頼はほとんど頂きません。

実力をあげる2つの方法

 翻訳に限らず、何かの実力をあげるには、ふたとおりあります。ひとつは、苦手な部分を克服すること。もうひとつは、得意な部分をさらに伸ばすことです。

  どちらも大事ですが、和訳か英訳かに関しては、わたしは好きなことをさらに伸ばすことに専念することにしています(開き直っているとも言います)。

 和訳と英訳両方できる翻訳家には憧れますし、正直少しはコンプレックスも感じます。また、和訳と英訳を比べると英訳のほうが割りが良いように見えるのもわかります。

  しかし、和訳と英訳、どちらかに苦手意識が強いなら、すっぱり開き直って、好きなほうの翻訳を専門にするのもひとつの手です。

  たとえ和訳の仕事獲得競争が熾烈であっても、能力を磨いて待ち、チャンスを絶対に逃さなければ、仕事は必ず獲得できます。また、質を落とさずにスピードを上げる鍛錬をし、処理枚数をアップさせれば、収入は増加します。

 ジャンルや分野の選択同様、英訳か和訳かにおいても、やはり好きなことを選ぶのがよいように思います。

※1補足

 翻訳レートは、最初に翻訳会社と、英→日が400詰め原稿紙一枚当たりいくら、日→英が4ダブルスペース1枚(200ワードか300ワード、翻訳会社によって異なる)当たりいくら、という契約を結びます。レートは分野と翻訳家のキャリアによって大きく変わってきます

 ご参考までに、わたしが駆け出しのとき、ある翻訳会社と初契約した時の金額は、和訳1枚(400字)1200円、英訳1枚(200ワード)2200円でした

 訳文で換算する場合と原文で換算する場合がありますが、これは訳文で換算した場合です。

-