英検1級は必要か

 「翻訳家を志すなら、まずは英検1級をとって、そのあと初めて翻訳に移るべき」と言われたことはありませんか?

  わたしはあります。翻訳家を志した当初、わたしはやっと英検準一級に合格したところでした。準1級と1級のレベルの差には、ご存知のとおり、はなはだしいものがあります。一時期はかなり真面目に、「早く翻訳を始めてみたい、でもまずは英語力をあげることだけに専念して、1級をとってから翻訳を始めるべきなのかな」と悩みました。

 結局、英検1級は目指さずに、英語力アップのための勉強と平行して、翻訳の翻訳も始めました。早く翻訳をしてみたい、という気持ちに勝てなかったのです。

  万人にとっての正解ではないかもしれませんが、その決断は、少なくともわたしにとっては大正解でした。英語力が不十分なままに始めた翻訳家への道は、確かに、苦難の道ではありました。英語力は、翻訳の土台です。土台がぐらつくとこころで推し進めようとするのですから当然です。

  でも、わたしの場合、英語の勉強だけをしていたら、モチベーションが下がって翻訳をするところまでたどり着かなかっただろうと思います。苦しいながらも、翻訳の作業は楽しかったのです。もっとうまく翻訳ができるようになりたいという思いがあったから英語の勉強も続けられました。

自分が翻訳家になって断言できること

 今、まがりなりにも自分が翻訳家になってみると、少なくとも実務翻訳の場合は、先に英検1級を取ってから翻訳の勉強に移るという必要はないと断言できます(実際、身の回りに、英検1級を持っている医薬翻訳家はおりません・・・・・・)。

  まず、「英検1級くらいとらないと」という言葉を、あまり真に受けすぎることはない、と思います。確かに、翻訳には高度な英語力が必要です。どのくらいの英語力がいるか、ということを、具体的な目安で示して言うならば「英検1級」という言葉になるわけで、必ずしも文字通り英検1級を受けて合格しなさい、という意味で言っている人ばかりでもないと思います。

 そして、もしそれを言葉どおり真に受けて、まず英検1級をとってから翻訳の勉強を始めるとしたなら、それは実務翻訳を目指す人にとっては回り道になると言えます。

実務翻訳と英検1級は別物

  実務翻訳は大変専門性の高い翻訳ですが、英検1級も英検1級で非常に独自色が強く、合格を目指すには、英検1級専門の勉強が必要です。

  実務翻訳と英検1級それぞれの専門性に重なるところがあれば英検1級の勉強も役立ちますが、ふたつは別ものです。英検を受けて実務翻訳に移ると、まったく方向性の違う専門的な勉強を、二度しなくてはならないことになります。

 ただし、回り道にも意味はあります。必ずしも目的地に直線距離で行かなくてはいけないわけではありませんし、英語や翻訳は、どんなことでも勉強したことが無駄になることはありません。それに英検1級を取得した場合、履歴書に書いたときのアピール力はいわずもがなです。

  でも、英検1級が実務翻訳に必要かと問われれば、わたしは必要ではないと答えます。

(自宅で翻訳の学習がしづらい方は、有料自習室を利用すると効率的です。)

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