語学力アップのために

 翻訳に必要な英語の読解力を上げるためには、多読と精読、両方を地道に続けること。言い古されていることですが、やはりこれは不可欠です。

 また、英文ライティングも平行して行うと効果的です。

  まずは日記など、気軽に書けるものから始めてみてください。英文を書く目線を持つようになると、英文を読むとき、「なぜここでこの言葉を使っているのだろう」などと考えながら読むようになります。

 そうすると、受動的になりがちな読む作業が能動的なものへと変わり、英文を読むことからより多くのものを得ることができます。続けることで読解力とライティング、両方の実力が上がっていきます。

  また、文法をおさらいしておくと良いでしょう。わかっているようでも、思い込みがある場合もありますし、あやふやになっている部分もあるはずです。一度きっちり全体に目を通しておくと、自信がつき、翻訳のスピードもあがります。

英語に苦手意識がある方へ

 英語が好きで翻訳家を目指す人は、あまり英語力で苦労することはないでしょう。努力することを楽しめるからです。

  しかし、必ずしも大の英語好きの方たちだけが翻訳家を目指すわけではありません。英語に苦手意識のある人は、英語力を上げるのは相当な苦しみを感じているはずです。

  今でこそ私も英語が大好きですが、以前はそうではありませんでした。

 やってもやっても英語力が伸びない。

  英語の壁が目の前に立ちはだかり、どうしてもその向こうの英語の世界に入っていけない。壁は高くて、堅くて、壊そうにもツメ一本立てられない。入り口も見当たらない。ただただ、壁をあちこちたたいてまわる状態が何年も続いている

  そんな疎外感とも劣等感ともいえない感じを味わい、ひそかに傷ついている方もいるのでしゃないでしょうか。わたしはそうでした。

 翻訳家を目指して以来、語学学校に行ったり、ラジオ講座を聴いたり、通信教育をしたりと、英語力を向上させるために、ずっと努力を続けていました。目の前に立ちはだかる壁を叩き続けました。よい教材に出会ったり、どうにか翻訳の仕事について英語漬けになったりするたびに、壁に小さな穴は開き、壁の向こうが垣間見えるようにはなってきました。

  それでも英語の壁は依然として目の前に立ちはだかり、崩れる気配はなく、わたしはいつまでも蚊帳の外でした。

5年目の転機

 翻訳家を目指し始めてから5年目、やっとのことで転機が訪れました。

  何気なくレンタルした映画のDVD。アイルランドを舞台にしたものでした。そこに出てくる風景や社会、人々の暮らしにひきつけられました。

  考えてみれば、英語圏の国や文化に興味がわき、心からもっと知りたいと思ったのはそれが初めてでした。

  さらに何本もアイルランドの映画を借りてきました。独特のなまりがある英語や、英国に対する屈折した思い。IRA、雄大な自然と妖精の伝説。ダンスと音楽。何もかも新鮮で、さらに興味が深まりました。

 日本語で紹介されたものをざっと読むと、それだけではあきたらなくなり、英語の本やホームページを読みました。あれだけ辛かった英語と向かいあうことが、すんなりできるようになっていました。

  英語観も一変しました。英語はコミュニケーション・ツールだなんて誰が言ったんだろうと思いました。英語はそんな無味乾燥な道具ではなく、文化と歴史がつまった、心そのもの、魂そのものに感じられました。

  ふと気がつくと、わたしはすっかり英語の壁の内側に入っていました。アイルランドというドアから、やっとのことで英語の世界へ招き入れてもらえたのです。

英語の世界をノックし続けてください

 ながながと自分のことを書いてしまいましたが・・・・・・。

  翻訳の勉強をしながら、なかなか英語が上達しないと焦っている方。必死のアプローチにもかかわらず、英語がこちらに見向きもしてくれないような気がして傷ついている方。自分には英語のセンスがないんだと、自嘲気味の方。

  あきらめないで、英語の世界をノックし続けてください。さまざまな英語圏の国の映画を見る。ドラマを見る。旅行する。留学する。教材を片っ端から試す。英会話を習う。BBCやCNNを見られる環境をつくる・・・・・・。

 地道に毎日努力をかさね、量をこなしていくという作業は、入り口を探すことでもあります。
思いつくかぎりの方法をためしてみてください。アンテナを伸ばして、感受性を磨き、直感に耳を澄まして、あなたのためにある入り口を見つけてください。

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