実務翻訳家のワークスタイル その2

在宅で働く場合

 在宅フリーランスなら、翻訳を必要としているソース・クライアントと直接契約するか、翻訳会社という翻訳専門のエージェントに登録して、そこから仕事を振り分けてもらうかです。

  しかし、直接契約は、もともと働いていた会社から仕事を請ける場合や、知人からの依頼がある場合など、特別のコネクションがある場合に限られてきます。そのため、基本的には後者の翻訳会社経由で仕事を得ることが中心になります。

  翻訳会社に登録するには、翻訳会社が用意するトライアルという試験を受け、合格しなくてはなりません。これについては別に書きましたので、そちらをご参照ください。

新米翻訳家には社内翻訳がおすすめ

 実務翻訳家の中には、在宅とオンサイト勤務を並行して行っている人もいます。また、そのときどきの事情に合わせて、在宅で働いたり、働きに出たり、働き方を変えている人もいます。

  わたしの場合は、在宅フリーランスが目標だったので、4年間社内翻訳をした後で、在宅になりました。しかし、最近では外の風が恋しくなり、週1日か2日、外で働ける仕事がないかと探し始めています。

 在宅フリーランスを希望していても、最初からいきなり在宅で仕事を始めたという人はむしろ少数派です。わたしを含め、多くが駆け出しの頃には社内翻訳家として経験を積んでいます。

  社内翻訳家として働くことは、専門知識の吸収や翻訳力アップに非常に役立ちます。また、収入が安定するのも大きな魅力です。在宅フリーランスを希望する人でも、先に一度は社内翻訳を経験しておくことをおすすめします。

 わたしの場合は、医薬品会社に勤務したのですが、その間、先輩や同僚の翻訳家と切磋琢磨し合いながら、一日8時間翻訳漬けになりました。おかげで勤務していた4年の間に、翻訳の質もスピードも格段にアップしました。また、医薬のバックグラウンドがなかったわたしですが、翻訳に必要な必要最低限の知識は、この会社で身につけることができました。

  さらに、現場に身を置くことで、翻訳の仕事が業務全体の流れの中の一部であることを身をもって知ることができました。その結果、次の作業をしやすくするための工夫や気配りなど、在宅フリーランスになっても不可欠な視点が、自然に身についたと思います。

 また、修行のためには、2社以上に行くとさらによいと思います。どの会社の翻訳にも、その会社のカラーがありますが、1社しか知らないと、その会社のカラーを絶対的なものだと思ってしまいがちです。

 別の会社に行き、最初の会社とは違うカラーの翻訳を目の当たりにすることで、それまでの自分の翻訳や、その偏りを客観視できます。そうすることによって、在宅フリーランスになったとき、どこからも受け入れられやすい、より普遍的な訳作りができるようになります。

 わたしの場合、社内翻訳のキャリアは、在宅になってからの仕事獲得に大きく貢献してくれました。それまでは、トライアルに合格しても、翻訳会社から仕事が来る気配はありませんでした。しかし、4年間の社内翻訳を経験した後は、トライアルに合格すると、ほどなくお仕事のお声がかかるようになったのです。

 駆け出しの翻訳家が、社内翻訳を経験して一人前になるまで、だいたい3年といわれています。いろいろな事情で、在宅で働けるからこそ翻訳家を志しているという方も多いでしょう。しかし、スキルアップの面でも、その後の翻訳人生の飛躍のためにも、少しの無理ならする価値はあります。チャンスがあれば、3年間、ぜひ社内翻訳を経験してください。

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